スタイリスト 大草直子 × BARBA スタイリスト 大草直子 × BARBA

02 / 02

BRAND FOCUS 02
Vol.2
スタイリスト 大草直子 × BARBA

端整なクラシックを継承する
美しさがそこにはあります

イタリアには家族経営で職人技を継承するファクトリーが多く、伝統的なものづくりを大切にする文化があります。そうした工場から発展したブランドは、目立った派手さはないものの、つくり手の情熱が感じられ、価格とクオリティーのバランスに優れているのが特徴です。シーズンによって大きな変化がない分、長く着られ、着古しても新調できる定番のラインアップが豊富なのも魅力。着る人の個性を際立たせるシンプルなデザインが中心なので、スタイリングの際にとても重宝しています。

ナポリの小さなシャツ工場として始まったバルバも、そんなわたしの大好きなブランドのひとつ。自身のキャリアのスタートとなった『ヴァンテーヌ』という女性誌は、トレンドに翻弄されない正統な美しさを追求するのがコンセプトだったのですが、当時から端整な顔立ちのバルバのシャツはよく誌面でも紹介していました。

わたし自身のバルバ歴は、30代前半のときに買ったリネンシャツが最初。そのときは少し着て似合わないと思ってしまい、しばらく疎遠になっていましたが、40代で子どもの行事に出席するためのオケージョンスタイル用に真珠色のシルクブラウスを購入したのをきっかけに、バルバの魅力を再発見しました。そのブラウスはボウタイ襟だったこともあり、特別なシーンだけでしか着られないと思っていたのが、ニットの下に着てタイだけを外に出すとしっくりくることに気がついたのです。

そこで改めて感じたのがクラシックの底力。歴史に裏打ちされた普遍的なデザインだからコーディネイトのアレンジがしやすいのはもちろんですが、揺るぎないファッション哲学や技術があるからこそ、時代に左右されない美しさがあるのでしょうね。

大草直子さんのコーディネート

近年のバルバでは、シャツに次いでジャケットがブランドの柱になっているとのことなので、ここではネイビージャケットをピックアップしました。シャツが出自のブランドらしく、芯地などの副資材を省いた仕立てで、袖ボタンもなく、着心地はシャツそのものの軽やかさ。昨今の温暖化している気候を考えると、秋冬でもこれで十分だと思います。

実は、仕事でメンズのスタイリングをあまりしないのですが、今回のコーディネイトは女性の自分でも着たいと思う組み合わせを考えました。軽快さやスポーティーな感じを、あえてジャケットを使って表現することを心がけ、奇をてらったところのないベーシックなネイビーとカーキを中心としたカラーリングを基本に、トラッド好きな男性がするアスレジャーをイメージしています。

このコーディネイトのいちばんのポイントは、白の使い方。成熟した男性は「威厳」や「迫力」「艶」といった部分をアピールするのは得意でも、「清潔感」や「初々しさ」を表現するのは苦手な人が多いように思えます。ただ、白はそうしたイメージを醸成する半面、アウターなどで使うのは難しいのも事実。そこで今回は、インナーと足元に白を使い、スポーティーさや若々しさを演出しました。白は肌に近い部分や、靴などの端にあたる部分にもってくると目に留まりやすいので、見た目以上の効果を発揮します。さらに、キャップやサングラスでも白の清々しいイメージを援護するようにしました。

服が好きであればあるほど、自分本位のもの選びになりがちですが、ファッションは客観的な視点が加わるとさらに喜びが増すもの。我が家では外出するとき、わたしがコーディネイトを決めてから夫が服選びをするのがルーティーンになっていますが、お互いを高め合い、コミュニケーションのための手段と考えると奥行きが広がります。そんな楽しみを、バルバで味わってみてはいかがでしょうか。

Jacket [BARBA],Cap [MONOBI],Eyewear [RETRO SPECS]

BARBAとは?

1964年に小さなシャツ工場として誕生。創始者アントニオ・バルバは、優れたシャツ職人を集め、限られた顧客のためにシャツやパジャマを製造。その後、ハンドメイドの伝統的なナポリスタイルをベースにした、トレンドを巧みに取り入れた素材使いと襟型、フィッティングで脚光を浴びる。現在はモダンでありながらハンドメイドの温もりを感じられるシャツとして、メンズ、ウィメンズともに世界中のファンを魅了。近年はテイラードジャケットの縫製工場を傘下に収め、製品ラインアップの幅を広げている。

スタイリスト 大草直子
スタイリスト

大草直子

NAOKO OKUSA

1972年生まれ。東京都出身。大学卒業後、婦人画報社(現・ハースト婦人画報社)入社。雑誌編集に携わった後、独立。ファッション誌、新聞、カタログを中心にスタイリングをこなす一方、イベント出演や執筆業にも精力的に取り組む。WEBマガジン『mi-mollet』のコンセプトディレクター、WEBメディア『AMARC(amarclife.com)』。インスタグラム@naokookusaも人気。近著に『飽きる勇気―好きな2割にフォーカスする生き方―』(講談社)がある。

スタイリスト 大草直子 × CRUCIANI スタイリスト 大草直子 × CRUCIANI

01 / 02

BRAND FOCUS 01
Vol.1
スタイリスト 大草直子 × CRUCIANI

いろんな垣根を越えてゆける
エレガントなニット

ストラスブルゴは常に大人にとっての上質を教えてくれるセレクトショップ。国内外を広く見渡して、本当に自分たちが納得した「本物」だけを扱っている印象があります。ここに行けば必ず素敵なものとの出合いがあるという信頼があるので、ファッション誌などのスタイリングをするときはいつも頼りにしています。

そんなストラスブルゴで、わたしが初めてクルチアーニのニットを買ったのは5年ほど前。当時は海外出張が多く、カットソー以上、ジャケット未満の汎用性の高いトップスを探していたところ、撮影でお借りしたクルチアーニのカシミヤとシルクを織り交ぜたハイゲージニットのことを思い出したのです。ブランドの代名詞にもなっているこの素材は、チベット山羊の産毛部分だけを採取したカシミヤにシルクをブレンドしたもので、品のいいナチュラルな光沢があり、毛玉になりにくいことも特徴。素肌に直接着られるほどの心地よさが味わえます。

また、ニットというと、日中に着用シーンが限定されるカジュアルなものと思っていましたが、クルチアーニのそれはコーディネイト次第でいくつもの表情が楽しめることに驚きました。たとえば、日中はチュールスカートに裾をインしてカジュアルに、夜はシルクブラウスにパールのネックレスを合わせればディナーにもふさわしい装いになります。こういう時間やシーン、さらには季節まで超えてゆけるニットはなかなかありません。

ウィメンズではなく、メンズのカーディガンもお気に入りのアイテムです。わたし自身、女性の丸みや柔らかさを強調するパターンより、マニッシュな感じが好きなのと、決して安い買い物ではないので、夫とも共有できるほうがいいかなと。ストラスブルゴで扱う服は、ジェンダーをブリッジして着られるものも多いので、こんなふうに一着の服を通じてパートナーとコミュニケーションできるのも素敵です。

大草直子さんのコーディネート

今回のコーディネイトの主役はルビー色のタートルネックニット。この色は今シーズン、口紅のトレンドカラーとして注目されていることもあり、女性が無意識に惹かれてしまう色なのに加え、一緒にいる女性を引き立たせる効果も期待できると思います。

組み合わせるアイテムには、詰まったように見えるタートルネックだからこそ、肩の力が抜けた感じを出したくて、キャラメル色のブルゾンとネイビーの細畝コーデュロイパンツを選びました。イメージはパートナーとゆっくりと過ごす週末に、海辺のレストランまでドライブデートといった感じでしょうか。こういったシーンで、男性がジャケットスタイルで決めてしまうと、一緒にいる女性がリラックスできないと思うので、TPOを考慮し、相手を思いやる気持ちも大切したいですね。

カラーリングはタートルネックニットのルビー色の主張を中心に据えながら、全体がまとまって見えるように意識しました。モノトーンやグラデーションのようなわかりやすい合わせ方ではありませんが、実はそれよりもずっと簡単。この手法は、それぞれの色の濃度や彩度を揃えると絶妙なハーモニーを表現できるので、普段から自分でもよくしています。ここでは深みのあるこっくりとしたキャラメル色と、控えめながら上品な光沢のあるネイビー、スエードブーツで落ち着きのあるブラウンをプラスしましたが、こういう組み合わせはある程度、年齢を重ねた男性にこそ、挑戦してほしいコーディネイトです。そして、袖口や裾をカットソーのように仕上げた新作もおすすめのアイテム。フィッティングに適度なゆるさがあり、よりカジュアルに着こなせます。ディテールに気を配り、時代性を巧みに反映するテクニックもクルチアーニならでは。いろんなファッションを経験した大人が行き着くのが、クルチアーニの上質なニットだと感じています。

Knit [CRUCIANI]

CRUCIANIとは?

吟味した上質な素材とクラシックの匂いをベースにした、モダンで洗練されたニットが特徴。「イタリアの情熱」が細部にちりばめられたコレクションは、エレガントなライフスタイルに向けた、着る人の個性にフィットするデザインが持ち味。イタリアのウンブリア州にあるメゾンにて、デイリーウエアからラグジュアリーレジャーウエアまで、日常のその時々がもつ理想的なスタイルをつくり出している。

スタイリスト 大草直子
スタイリスト

大草直子

NAOKO OKUSA

1972年生まれ。東京都出身。大学卒業後、婦人画報社(現・ハースト婦人画報社)入社。雑誌編集に携わった後、独立。ファッション誌、新聞、カタログを中心にスタイリングをこなす一方、イベント出演や執筆業にも精力的に取り組む。WEBマガジン『mi-mollet』のコンセプトディレクター、WEBメディア『AMARC(amarclife.com)』。インスタグラム@naokookusaも人気。近著に『飽きる勇気―好きな2割にフォーカスする生き方―』(講談社)がある。