FOCUS ON 2024 SS Vol.4  CISEI

たっぷり語りたい、あのブランド・この名品

スイス産「リンドス」カーフを駆使した
<シセイ>の名作フラップトート「981」

クラシックが尊ばれるメンズウェアの世界とはいえ、時代性やトレンドにまったく翻弄されることのない、
普遍的で本質的に優れた品質とデザイン性を誇る、稀有なバッグブランドがあります。
その名は、<シセイ>。イタリア・トスカーナを拠点とする日本人職人・大平智生(ちせい)氏が手がけ、
最上級の素材を贅沢に使用した、丁寧な手仕事によって仕上げられる珠玉のコレクション。
そのなかでも、現代のライフスタイルにスマートに寄り添うフラップトートの名品、「981」をご紹介します。

伝統を受け継ぐ、革の"マエストロ"
─大平智生氏が手掛ける<シセイ>のバッグ

ファッションは言うに及ばず、ワインに料理、家具、建築などの本場としても知られるイタリアは、庭を使った景観づくりでも世界をリードする庭園大国です。そんな"聖地"の造園計画を学ぼうと、身ひとつでトスカーナに渡った大平智生(ちせい)氏。しかし、そんな氏を庭園以上に強く魅了してしまったのが、フィレンツェの伝統的な産業のひとつである鞄づくりでした。

大平氏が暮らすトスカーナ州のフィレンツェは、ルネッサンス時代からイタリアの美と文化の中心として栄えてきた芸術の都。イタリアンレザーの名産地であるサンタ・クローチェ地区を抱える、欧州皮革産業の中心地と呼べる場所でもあります。しかし、そんな聖地にあっても今日では、裁断や縫製、仕上げなどの工程ごとに専任の職人が作業を担当する分業制が主流となっており、いちから独力で製品をつくり上げることのできる職人は、ごくわずか。イタリア伝統の鞄づくりにおける精髄を継承し、上質なレザーバッグを独力で生み出すことのできるマエストロ(達人)、それが大平智生氏なのです。

素材を吟味し、道具にもこだわる
<シセイ>がタイムレスである理由

そんな大平氏がプロデュースする<シセイ>の鞄づくりは、まず原材料の選定から始まります。本体表側に使われるレザーには、しなやかできめ細かく、できるだけ"接ぎ(はぎ)"のない大きなレザーを贅沢に使用。上質なスイス産原皮をイタリア国内で鞣した、「リンドス」と呼ばれる最高級カーフはその象徴ともいうべき素材です。

内側のライニング素材には、クラシカルなムードと耐久性を兼ね備えるピッグスエードを多用。他人からは見えない部分とはいえ、効率や利益を優先した妥協は一切ありません。またハードウェアにおいても、使い勝手はもちろん、触れたときの質感や光沢感にまでこだわり抜き、量産品では満足できずに削り出しのオリジナル真鍮パーツを特注してしまうことも多いのだとか。

そして鞄の仕上がりを左右するステッチは、使い込んだあとの風合いを想定して糸から吟味。さらに素材の特性や縫う部位などに合わせてミシンの設定を細かく調整し、縫い方はもちろん、どれぐらい細かなピッチで縫うべきか、針の種類にまで徹底的にこだわり抜いて、理想のステッチを追求しているのです。

洗練された美意識と微に入り細を穿つこだわり、卓抜の職人技術などが奇跡的な融合を果たし、タイムレスなミニマルデザインへと昇華した究極のマスターピース───それが、<シセイ>のレザーバッグです。

最高級レザーの「リンドス」カーフ、
そしてリッチな使い心地に酔いしれる

そんな<シセイ>のコレクションのなかから、いまの季節にぴったりな"未来のスタンダード"をご紹介したいと思います。それが、このフラップトートバッグ「981」です。

「981」の最大の特徴は、接ぎのない大きな1枚革を贅沢に使用し、ハンドルを優しく包み込むようにデザインされたフラップトップ。このフラップやボディに使われているレザーこそ、欧州の数ある生産地のなかでも特に品質のいい原皮を生み出すことで知られる、スイス産のカーフ「リンドス」です。「リンドス」はなめらかな肌触り、しなやかでふっくらとした質感をもち、落ち着きのある上品な高級感を醸し出すシュリンクレザー。レザーというのは1枚1枚が形も大きさもバラバラで、小さなシワやキズが入っていて当然の天然素材です。その限られた一級品のなかから極上の個体のみを厳選し、無駄が多く発生する大きなパーツで切り出す───それがいかに贅沢で価値あることか、お分かりいただけるかと思います。

バッグ内側のライニングには、手を差し入れた際の肌触り、高級感のあるルックス、タフに使い込んでも破れずヘタらない耐久性を兼ね備えた、ピッグスエードを使用。また、毎日持ち運ぶ大切な身の回り品に色移りなどすることがないよう、あえて無染色のスエードを用いるというエレガントな配慮がなされているのです。

見えない部分へのこだわりという意味では、ハンドルこそその真骨頂かもしれません。手持ちでも肩掛けでも使える絶妙な長さに設定され、一般的なプラスチックではなく、特別にオーダーした革ひもを芯素材として採用することで、強さ、しなやかさ、経年変化を含めた<シセイ>ならではの味わいを実現しています。

そして知る人ぞ知る、ブランドのアイコンとなっている真鍮製のオリジナルバックルは、着け外しが極めて簡単で使い勝手抜群。バックルを外してフラップトップをバッグ内部に収めると、あっという間にシンプルなオープントップのトートバッグに早変わりするという機能的ギミックも見逃せません。またオリジナルの底鋲まで装備して、外出先で地面や床に直置きしなければならないというシチュエーションにも対応してくれます。

ユニークなシェイプのフラップがさりげなく個性を際立たせ、キラリと光るオーバル型のバックルは上品なアクセントに。内部はさまざまな小物をスマートに収納できるポケットをバランスよく備えており、ビジネスからカジュアルまで、あらゆるオケージョンに対応する万能選手───「981」は、そのジェンダー&ジェネレーションフリーな佇まいゆえ、大切なパートナーやご家族とシェアいただけるのも大きな魅力です。

上質な素材にのみ宿るリッチなテクスチャーをそのままに、卓越したクラフツマンシップと本物の美意識によってバッグとしての生命を得た<シセイ>のコレクション。この「981」は、この機会にぜひともワードローブに加えていただきたい、最高の名品です。