FOCUS ON 2024 AW Vol.2  FULLCOUNT

たっぷり語りたい、あのブランド・この名品

ERAL55が見初めたジャパンデニムの雄
<FULLCOUNT>とのコラボデニムが誕生

「ストラスブルゴとともに、日本でオリジナルのデニムをつくりたい」───このプロジェクトは、イタリア・ミラノで大人気のセレクトショップ「ERAL55」のオーナーであるエルマンノ・ラッザリン氏の、何気ない一言をきっかけにスタートしました。ジャパニーズデニムにも精通するラッザリン氏がコラボレーターとして選んだのは、大阪を拠点に1993年に創業し、アメリカンヴィンテージ独特の味わいと穿き心地を徹底的に追求して世界的な評価を獲得する実力派メーカー、<FULLCOUNT>。さまざまなこだわりを詰め込み、「STRASBRUGO」と「ERAL55」という異色の三者共演により誕生した最強コラボデニムをご紹介します。

味わい深く、着心地のいい、
"未来のヴィンテージ"たりえる特別なデニム

洗練された紳士的男性像を描き出す、精緻な職人技術とテーラリング。そして厳選された最高級の素材使いが生み出す圧倒的なラグジュアリー感───そんな無二の魅力によって世界中のセレブリティや服飾愛好家を虜にするイタリアンファッションですが、その華やかなイメージとは対極的な、タフでラギッドなアメリカンカジュアルとそのヴィンテージに強い憧れを抱いているのも、ほかならぬイタリアン人男性たちであることをご存知でしょうか。

イタリア・ミラノの人気セレクトショップ「ERAL55(エラル チンクアンタ チンクエ)」オーナーであるエルマンノ・ラッザリン氏も、そのひとり。しかしその類まれな審美眼により選び抜かれ、新たな解釈によって進化を遂げたアイテムたちは、俗に言う"アメカジ"とは一線を画す、細部にまでこだわりが徹底された名品ばかりです。

1976年、ミラノにある世界有数のブティック街として知られるコルソコモ通りで創業したセレクトショップ「ERAL55」は、世界のファッションジャーナリストやバイヤーたちがミラノを訪れた際、必ずといっていいほど立ち寄る"巡礼地"のような存在として知られています。オーナーであるラッザリン氏はミラノでサルトリアを営む父のもとで洋服に慣れ親しんで育つとともに、アメリカンカジュアルにも大きな影響を受けながらこのショップの礎を築いていきました。まさに、ここで展開されているのは、ヴィンテージカジュアルとイタリアンクラシックとを現代的な感性で融合させた、創造的でオリジナリティあふれるコレクション。

「ERAL55」がオープンした当初、世界各地で買い付けたヴィンテージにさまざまな加工を施し販売していたラッザリン氏ですが、父の逝去とともにサルトリアを継いでからは、その仕立て服にも手を加えていくという挑戦を開始。さらには、もっと独自性を打ち出したプロダクトを展開していきたいという思いから、新たに加工や仕上げ専門のラボラトリーを開設。これが、ハンドメイドで丁寧に仕立てたクロージングに、洗いや製品染め、クラッシュといった多彩な加工を施し、世界に1着のスペシャルピースを完成させるというビスポーク専門レーベル、「Sartoria Lazzarin(サルトリア・ラッザリン)」の始まりです。


そんなラッザリン氏だからこそ、デニムに対してのこだわりも尋常ならざるものがあります。

以前からジャパニーズデニムのクオリティや加工技術に大いなるリスペクトを抱き、「ストラスブルゴとともに、日本でオリジナルのデニムをつくりたい」と考えたラッザリン氏は、日本屈指の実力派デニムメーカーである<フルカウント>との協業を熱望。ここに「ERAL55」と「ストラスブルゴ」、そして<フルカウント>という三者コラボが実現することとなりました。それぞれがまったく異なるアプローチでそれぞれの"ファッション"を真摯に追求し、ものづくりを追求してきた三者。決して交わるはずのなかった"道"が奇跡的に交差し、誕生した今回の特別なプロダクトの背景には、まずなによりもラッザリン氏の並々ならぬ情熱があったのです。

このトリプルコラボレーションにより誕生したのは、スリムストレートのデニムパンツと「2ndタイプ」をベースとしたデニムジャケット、ウエスタンシャツ、そしてキャンバスジャケット。もちろんパンツとジャケットはセットアップでの着用が可能です。

デニムパンツとデニムジャケットの生地は、<フルカウント>が創業当初からつくり続け、その象徴的存在となっている13.7ozのジンバブエコットン製オリジナルセルヴィッチデニム。この生地は伸縮性や弾力性に優れ、タイトなシルエットでも身体の動きを妨げないストレスフリーな着心地を堪能できるすぐれものです。またジンバブエコットン自体が高級ドレスシャツにも使用されるほどの美しい光沢と超長繊維を有していて、この繊維に負荷がかからないよう、熟練の職人が旧式の力織機を調整しながらじっくり丁寧に織り上げているものです。

デニムパンツは、<フルカウント>の定番モデルである「1108」と同様のスリムストレート。細すぎず太すぎずの裾幅はレザーシューズとも相性がよく、クラシックなスタイルにもハマりやすいのが魅力。未来のヴィンテージとなるべく穿き込みや色落ちによる変化を見据え、ステッチはオールコットン、オリジナルのオレンジからイエローへと変更しています。またクリーンなネイビーとヴィンテージ加工が施されたインディゴにはレザーパッチ、オフホワイトには紙パッチがあしらわれ、特別なコラボ印字をプリント。フラッシャーはリネンを使用した下げ札付きのオリジナルデザインを採用し、さらにパンツポケットのスレーキに、サイズ表記の印字が施されているのもポイントです。

デニムジャケットも、同じく<フルカウント>の定番モデル「2102」がベース。「2ndタイプ」のデザインを踏襲している「2102」をモディファイし、アームホールを狭く、より身体にフィットしやすいパターンへと変更しています。このオーセンティックなデザインと着心地の良さの両立、そして13.7ozのジンバブエコットン製オリジナルセルヴィッチデニム特有の伸縮性、吸水性、撥水性により、多彩な着こなし、さまざまなオケージョンで活躍してくれる傑作に仕上がっています。また、季節が深まればコートやブルゾンのインナージャケットにも最適で、1年を通して愛用できるという点も見逃せません。

創設以来、旧き良き1940〜50年代のヴィンテージデニムを理想とした、"本物"を追求するものづくりを続ける<フルカウント>。単に当時のジーンズの作りや色落ちなどを"再現"するだけでなく、着心地の良さ、着回しやすさを併せて"再構築"する技術力は、このブランドならではでしょう。そしてアメリカンカジュアルに造詣のあるイタリア人らしいラッザリン氏ならではの感性で、モダンに、洒脱にアレンジして魅せる「ERAL55」のアイデア、それを高級感のあるリアルクローズとして具現化する「ストラスブルゴ」のプロデュース───どれかひとつでも欠ければ成立しなかったであろう夢のトリプルコラボの完成度、ぜひその目でお確かめください。


Photographs by Mai Kise
Styling by Taichi Sumura
Edit & Text by america
Cooperation by 08book