かつてナポリはヨーロッパ随一の栄華を誇り、富と共に様々な文化が集中しました。現在の町並みや人々に感じられる、どこかエキゾチックな雰囲気は、ナポリが異文化の交流点であった事を強く感じさせます。社交界に代表される当時の着こなしはクラシックな仕立て服であり、当時のナポリには驚異的な仕立ての技術が文化と共に生まれる事となりました。サルト達は自らの腕を奮い、繁栄を極めました。7代に渡り、服地卸を営む家系に生まれたCiro Paoneは、サルト達との親交を深めると同時に、職人の高齢化や、ナポリを取り巻く環境の変化から、その素晴らしい仕立て服の文化を受け継ぎ、守り続けなければいけないことを見抜いていました。そこで、脈々と受け継がれてきたナポリ仕立てによる、あたらしい時代の最高のスーツ作りを掲げて、1969年、Kiton(キートン)を設立しました。
モデリストにチェザーレ・アットリーニ、製造にエンリコ・イザイア、さらにはルチアーノ・バルベラまでもが創生期のキートンに参集しました。それは実に純度の高い、歴史的な幕開けでした。世界で最も美しい服を掲げるキートンは、この上ない生地と優れた職人を礎に、理想とするエレガントを求め続けています。芯地と服地の相性、アイロンによる馴らし、袖や肩、ボタンホールのかがりなど、着心地や着易さの為には一切の妥協はありません。キートンの服特有の柔らかさとドレープの美しさは職人たちの手によって作り出されているのです。羽織るという表現がふさわしい軽い着心地や、シーズン性の高いカシミア、シルク、リネンなどをふんだんに使った、エクスクルーシブのファブリック、一貫して流れる柔らかな曲線をもったエレガントなシルエット。ナポリ仕立てを頑なに守りつつ、現代的でフレッシュな感覚を併せ持ったコレクションは美しい魅力に溢れています。こうして伝統を受け継ぐことから始まったキートン。近年ではそのクオリティーとエレガントな雰囲気を併せ持つトータルコレクションとしての展開がスタートしています。スーツ・ジャケットはもちろん、コート・パンツ・シャツ・タイ・シューズ・ニットに至るまで、上質なモダンクラシックの世界がここにあります。研ぎ澄まされた感覚に訴えかける、圧倒的なクオリティー。袖を通した瞬間にその人の服となる柔らかな風合いは、全てのキートンに流れる情熱と魂の結晶です。生地のカッティング・アイロン・縫製等の工程は、それぞれ専門のサルトが請け負っており、そのほとんどは、非常に技術と時間を要する手作業によります。この上なく繊細なファブリックは、一枚ごとにハンドカッティングされます。そして一度水に浸され収縮させた特別なキャメル芯地、手作業による芯据え、まるで生き物のようにその姿を変え、立体的なパーツへと生まれ変わります。各パーツは、ハンドメイドによる縫い目の強弱、曲線を多用した仕立てにより、美しいシルエットとまるで羽織るような軽い着心地を実現します。また1着のジャケットは、およそ150もの段階と20時間を経てつくられています。つまり150人のサルトの手と、丸一日という時間を経て、1着のジャケットが完成するのです。かつてナポリがヨーロッパ随一の繁栄を極めた時代から続く、サルトリアーレの文化と優れた技術をベースに作られるキートンの服は、サルト達の汗と情熱、そして至高の服づくりにかける魂が生み出した、芸術といえます。そして、キートンが頑なに貫くのは、クオリティとオリジナリティへの探求。イギリス・イタリアのトップミルで織られる、贅沢で高品質な生地のコレクションは、そのほとんどがキートンだけのエクスクルーシブです。この上なく細く強靭な、13.2ミクロンウールやSuper180's4PLYなどのウーステッド、カシミア100%のスーツ素材、グアナコやビキューナに至るまで、のファブリックにはキートン特有の艶っぽさと質感を湛えています。