"ガエタノ アロイジオ"の仕立てを語るうえで、まず初めにイタリア・ローマという土地の地域性、また、その歴史について語ることから始めたいと思います。イタリア半島は19世紀中頃、イタリア王国に統一されるまで様々な王国や公国、共和国が混在していた長い歴史があり、各地域にはその文化が今なお色濃く残っています。
その中でも都市国家から帝政になるまでの歴史を持ち、イタリア半島の中央に位置するローマは言わずと知れたイタリアの首都であり、政治の中心地でもあります。ローマにはイタリアという国家を形成してきた歴史と権力が集中しており、現在もバチカン市国はローマン カトリック以降の象徴であり続け、ローマの建築物や街並みは威風堂々とした趣を醸し、多くの人を魅了するのです。そんなローマを代表するサルトリア、ガエタノ アロイジオのアトリエはボルゲーゼ公園やスペイン広場、官庁街にほど近い小高い丘の一等地にあります。現代アートの作品が並ぶ優雅なサロンは、他のそれとは一線を画します。
その宮殿のようなサルトリアの当主であるガエタノ・アロイジオ氏は1963年イタリア南部のカラブリア州クロトーネに生まれました。11歳からサルトの修業を始め、16歳の時にサルトの修業のためミラノに移住し、そこで4年を過ごします。その後、技術の向上を目指してローマに渡り、仕立て職人を養成する学校に通う傍ら、名門として名高いサルトリアルッツィで修業を積みます。そして、ガエタノ氏自らも転機と語るのは1986年、サルトの登竜門としてイタリアで最も名誉ある賞、フォルビチ・ドーロ(金の鋏)を若干22歳にして受賞。当時の史上最年少受賞であったその記録は、今もなお破られていないそうです。氏はこの受賞を機に、サルトとして自身の一生を捧げ、生涯この道で挑戦し続けていくことを自らに誓ったと語ります。
ローマの仕立ては、ミラノのように構築的といわれるような肩や胸周りを強調したスタイルではなく、また、ナポリのように極力軽い副資材を使いまとうような着心地のものでもない。イギリス発祥のテイラードにイタリア独自の文化が融合したエレガントなスタイルで、軽い副資材を使いながらもどこか威厳と華やかさを湛えます。では、ガエタノ アロイジオのハウススタイルは何かと氏に尋ねると、顧客一人ひとりの要望や個性に合わせたもの作りを心がけているので、定型のデザインではないという答えが返ってきました。そんななか、どのような顧客にも完璧なものをつくるという強い信念のもとに考えられた、徹底した生産体制は一つの大きな特徴と言えるかもしれません。その生産体制とは、ガエタノ氏のみが採寸を行い、型紙を引き、フィッティングを担当する。そして、アトリエで働く総勢35名の職人が、数人のマスターテーラーの監督の下、それぞれの工程を分業して行うというもの。
ガエタノ氏が自ら職人の技量を見極めて担当する工程を決め、職人の良さを活かしつつ、常に安定したクオリティーを保ち、同時に職人を育てていく。サルト(職人)であることだけでなく、良いサルトリア(テーラー)であり続けるためには、常に新しい市場を模索し、後進への指導を行っていくことが不可欠であると語ります。現在では、イタリアをはじめとするヨーロッパのみならず、中東やアメリカなどの政財界のエスタブリッシュメントを主要顧客として抱えながら、後進育成などの活動に於いてもローマで高く評価されているのです。
<仕立ての特徴>
着る人の姿勢を美しく見せ、男性的な強さを感じさせるラインでありながら、着用した時に感じるその圧倒的な軽さが見た目とは全く異なる印象を与えます。政治・宗教の象徴とも言えるローマという街が持つ特異性が、緻密で完璧なものづくりを目指すガエタノ氏の情熱によって形となり、極めて端正な一着となるのです。
<バスト>
男性的な色気を象徴する部分であり、見た目には張りを感じながらも、着用したときに感じられる柔らかいフィット感と余裕を感じさせるシルエットが特徴。また、ショルダーやラペルとのバランスも絶妙です。
<ラペル>
適度な曲線を持ちながらも精度の高い縫製のためシャープに見せることができます。ラペルの返り部分のロール感は、裏に羽差しという技法を使用しているにも関わらずほとんど表に出てこないほど丁寧に処理されています。
<ショルダー>
こちらも見た目の印象と着用した印象が大きく異なります。肩パットはしっかりと入っているものの、触ってみるとソフトでしなやかで軽い芯を使用していることが分かります。非常に軽くソフトな肩への乗り感です。
<袖付け>
立体的なバストに呼応した袖付けは端正さの中にも手縫いならではの柔らかさが潜んでおり、わずかなドレープを感じさせます。
<ボタンホール>
立体的で細かいピッチが正確に並び立っており、色気を感じさせます。ここまで細かいピッチのボタンホールは他に類を見ないほどです。
<フラップ>
端の処理がきれいになされており均一性があるため、スーツ全体に端正な印象を与える要因になっています。
<ステッチ>
ほかのディテールと同様に手縫いとは思えないほどの均一なピッチと掬いの細かさが高い技術を感じさせます。
<内ポケット>
ガエタノ氏のセンスを感じさせるディテールの一つです。
SHOP EVENT
ローマを代表するサルトリア ガエタノ アロイジオ。11歳からサルトの修行を始めたガエタノ・アロイジオ氏は、1986年にサルトの登竜門としてイタリアで最も名誉ある賞、フォルビッチ・ドーロ(金の鋏)賞を受賞。1991年に自らのサルトリアを開業し、今では世界の政財界の要人が顧客リストにその名を連ねています。顧客ひとりひとりの個性にあった、世界中どこでも通用する最高品質のスーツを作ることに、強いこだわりをもつアロイジオ氏。2011年には、イタリア共和国功労勲章を授与されました。世界中のエスタブリッシュメントに好まれる最高品質のスーツのビスポークイベントです。この貴重な機会にぜひお試しください。
DATE|日程
7月20日(土)・21日(日)南青山店 ☎ 03-3470-6367
※ゆっくりとおくつろぎいただくためにアポイント制とさせていただいております。