春をこがれる梅のつぼみのようなDELVAUXの革小物

二子玉川店のある玉川高島屋の地下には築地の魚屋さんがお店を構えていらっしゃるのですが、近頃その店先に、見事な鰆が並ぶようになりました。
鰆と言えば関西では春が旬の魚ですが、関東では産卵直前の脂ののった寒鰆が旬です。
魚に春と書いて「鰆」。優しいふくよかな味が春を待ち焦がれる今の時期にぴったりで、季節と食の旬と言うのは何と良く出来ているのだろうと今更ながら感心してしまいます。


春の初めはやはりふんわりと柔らかく広がるような優しい色合いが旬。
その年のキーカラーが何色であっても、冬の静寂の中に突然奇抜な夏の色を盛り込む事はあまり考えられません。



春を待つ、静かで無色透明な時期に、私共がご紹介するのは春色のDELVAUX(デルヴォ―)です。
冬の白い空の下で冷たい風に吹かれても、取り出した指先に春を感じさせるような上品な革小物をご覧下さい。


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DELVAUX Pouch Salmon pink M ¥ 50,760 (inc. Tax)
DELVAUX Pouch Light Blue M ¥ 50,760 (inc. Tax)
※縦 10.5cm / 横 16.0cm / マチ 5.5cm

ブリュッセルのトランク製造業者、シャルル・デルヴォ―が鉄道旅行の際に財布や化粧小物を手元に置いておくためのキャリングバッグとして、機能的で優美なバックを発売したのが事の始まり。

そんなブランドのバックボーンは、こんなシンプルな革小物にも映し出されています。

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マチは底辺が広く、たっぷりと収納できるよう、ふっくらとした丸みを持たせてあります。
また、ボリュームがあっても掌にしっくりとなじむよう、上辺をスリムにシェイプし、しなやかで厚みのあるパイピングが、中に何も物が入っていなくても美しいまま崩れない型の支えに一役買っています。
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驚くのは内側のファスナー周りも革張りになっていることです。
DELVAUXは、5年ごとに審査が更新されるベルギー王室御用達の厳しい認定を、クリアし続けている大変誠実なブランドであることも知られていますが、その佇まいの美しさはときに彫刻に例えられます。
ポーチはこの細やかな処理により、オーナーの手の中で永くお使い頂いても、いつまでも店頭に並んでいる新品の様に、端正な佇まいを保ち続けることでしょう。
また裏生地の「DELVAUX」のロゴが、きちんと底面中央にくるよう張られているのがご覧頂けますでしょうか。
バックから取り出したポーチの、持ち主の目の先にこのロゴが写ると思うと、遠い昔のベルギー鉄道に乗車した淑女に思いを馳せ、女性として背筋の伸びる気持ちです。




こちらのポーチにはSサイズがございます。
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DELVAUX Pouch Light Blue S ¥ 31,320 (inc. Tax)
DELVAUX Pouch Beige S ¥ 31,320 (inc. Tax)
※縦 6.5cm / 横 9.0cm / マチ 3.0cm


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小さくても上記のMサイズと同じく、ふっくらとしたフォルムとそれを支える内側からの革張りがあり、
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裏地のロゴもきれいに中央に位置しています。



世界最古と言われるバッグブランドDELVAUXは1829年創業。
ベルギー王国独立が1830年ですから、それよりも一年古い、正にベルギーの歴史と共に歩んできたブランドです。
1835年にヨーロッパ大陸初の旅客鉄道路線がベルギーに開通したことで1875年頃にはベルギーは世界最大の鉄道網を有していたといいます。
言われてみれば、DELVAUXのバックには同じ革を背面に張った、バックとお揃いの手鏡がついています。
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こちらです。
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初めてこれを見たときは「なんて細やかな心配りだろう。」と感心したものですが、なるほど、鉄道旅行のお共になっていた歴史があったのですね。
ちなみにこのパープルのバックのお顔はこちらです。
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DELVAUXのアイコンバックのひとつである"Le Madame"(マダム)です。

DELVAUX Le Madame Mini Shoulder bag ¥ 240,840.- (inc. Tax)

IMG_0163.JPGシンプルな差し込みタイプの蓋。中も無駄を削ぎ、程よいマチがあり、お財布や携帯など、必要な身の回り品をすっきり収納できます。IMG_0164.JPG


二子玉川店にはちょうど同じくらいのサイズ感で、同じくアイコンバックのひとつ
"Le Simplissime"(サンプリシーム)ミニショルダーバックもございます。
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DELVAUX Mini Shoulder bag ¥ 252,720 (inc. Tax)


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こちらにも程よいマチがあり
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もちろん同じ革を張った手鏡がついています。
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手鏡に入っているDELVAUXのロゴは、バックに合わせて色合いを変えられているようです。



では、こちらの手鏡と対になっているバックは、一体どのようなデザインでしょうか。
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黒いカーフに艶のある黒いロゴ...先程までと全く同じ丸い手鏡なのに、なんだか風格を感じさせます。
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持ち手の付け根部分です。
まさしく彫刻のような存在感。
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この金具のD型カーブ。もうお気づきですね。


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そうです。これはDELVAUXの3000点以上あると言われるデザインアーカイブの頂点。
"Le Brillant"(ブリヨン)のミニバックです。

Le Brillant Mini bag ¥ 442,800.- (inc. Tax)

しかも金具への差し込み部分にガルーシャ(エイ革)を贅沢に使用した特別なモデル。
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ベーシックなブリヨン ミニと並べてみました。
右)DELVAUX Brilliant Mini ¥ 399,600 (inc. Tax)
D型金具の色と革質の違いだけで、基本となるデザインも大きさも同じなのに、こんなにも印象が違います。

ガルーシャ(エイ革)について、少しご説明しましょう。
エイとはもちろん、海洋生物の、あのエイです。
硬くて水に強いことから、日本でも刀の柄部分の装具などに使用されてきました。わさびおろしもエイ革ですね。
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この中央の白い斑はエイが光を感知する部分なのだそうで、一匹のエイに一か所しかありません。
ミニバックの小さなディテールのために、こんなに大きな白斑を持つ体格のエイを使うとは、さすがです。
また、硬いエイ革をミシンで直線に縫う事は出来ませんから、ご覧の様に、デザインに響かない様に文字通り「隙間を縫って」職人の手縫いの技術が生きています。

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DELVAUXならではの、ムラも傷もない最高級ボックスカーフの美しい光沢に、磨かれたガルーシャの鏡面を感じさせる光沢が何とも言えないオーラを放ちます。



ところでアイコンバック"Le Brillant"(ブリヨン)は、雑誌などでも多く取り上げられ、目にする機会が増えたと思いますが、こちらのデザインはご覧になったことはありますか?
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写真は東京ミッドタウン店の記事より。


フランス語で
「Ceci n'est pas un DELVAUX」
(これはDELVAUXではない)
と書かれています。

美術史をご存知の方はお分かりになると思いますが、
実はベルギーを代表するシュルレアリスムの作家、マグリットの「イメージの裏切り」という有名な作品があります。
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パイプの絵の下に「Ceci n'est pas une pipe.(これはパイプではない)」という文字が書かれているのですが、
人々は、描かれたパイプを見て「パイプだ」と認識するが、絵の下の文字を読むと「これは(実物の)パイプではない(絵である)」と打ち消される。モデルに限りなく似せて描く西欧絵画史の伝統とその矛盾に一石を投じたユーモラスで哲学的な作品なのです。


ベルギーの発展と共に芸術作品として成長を遂げてきたDELVAUXの知性とユーモアに富んだ一面が伺える逸品。
昨今のファッション界のアーティスティックな流行の中に於いても、これほどさり気なく日常に溶け込むアートが他に存在するでしょうか。



さりげなさ。というのは永遠のテーマであり、あこがれです。
さりげなく、オーラがあるヒト、モノ。
DELVAUXがベルギーの歴史と自分たちのバックボーンに誠実に、ポーチの裏側に革を張って形状を整えたり、旬の食べ物や色合いが自然や季節に密接に寄り添うこと。
「今、この季節、この空気感だからこの色が美しい。」と感じさせてくれるような、世界との関係性が、その美しさを際立たせる秘訣なのかもしれませんね。




二子玉川店には他にも、やわらかい春色のお洋服が続々と入荷しております。
花のつぼみを見つけるように、春の香りを楽しみにいらしてください。


ストラスブルゴ二子玉川店