2009年のスタート以来、RIVORA(リヴォラ)は日本のクラフトマンシップに根ざしながら、大人のための上質なカジュアルウェアを提案してきました。そんなRIVORAが展開する「リヴォラ アートプロジェクト」は、毎年異なるアーティストに焦点を当て、Tシャツというメディアを通じてアートとファッションの橋渡しを試みる企画です。2025年春夏は、20世紀初頭にドイツ表現主義の出発点として誕生した芸術家集団 Brucke(ブリュッケ) とのコラボレーションが実現しました。

今回のシリーズでは、エルンスト・ルートヴィヒ・キルヒナー による初期木版画4作品をモチーフに採用。インクジェットプリントと刺繍の技法を用いて、作品のエッセンスを立体的に再構築しています。鋭角的なフォルムと大胆な構図には、時代への反骨精神と内なる情熱が刻まれており、Tシャツを通してその思想に触れることができます。アートを「着る」ことは、思考を「まとう」こと。RIVORAらしい哲学が凝縮されたコレクションです。

「ブリュッケ」とはドイツ語で「橋」を意味します。由来には諸説ありますが、彼らが影響を受けた思想家ニーチェの「人間の偉大さとは、目的ではなく"橋"であることにある」という言葉に基づいたという説が有力です。彼らは19世紀のアカデミズムや印象派といった既成の価値観に抗い、まだ見ぬ未来に向けてドイツ芸術の新たな地平を切り拓こうとしていました。その姿勢が、今もなお鮮烈に息づいています。
Artsalon Fritz Gurlitt 展
伝説的カタログを再構築した一枚
1912年、ベルリンの画商フリッツ・グルリットのギャラリーで開催された「ブリュッケ展」。その記念カタログの表紙をモチーフに、キルヒナーの木版画を立体刺繍で再構成した一枚です。荒々しい彫り跡や黒インクの重厚さを刺繍で巧みに再現。アフリカ美術の影響が色濃く現れるフォルムに加え、袖にはキルヒナーのイニシャル「ELK」が控えめに刺繍され、細部にまでこだわりが宿ります。静けさと緊張感が共存する、完成度の高いTシャツです。
フリングダンス
静と動が交差する、キルヒナーの革新性を宿した一枚
1912年制作の「フリングダンス」をモチーフに、スコットランドの伝統舞踊を題材とした動きのある構図を採用。原作の紙の経年変化をインクジェットで再現し、口元には赤い刺繍を施すことで、静謐な雰囲気の中にほのかな熱を感じさせます。この作品には、キルヒナーが当時交際していたダンサーとの関係も重なり、個人的な背景がにじみ出ています。表現主義特有のエネルギーと洗練が交錯する一枚です。
Ball
大戦前夜の緊張感と構成美を映した一枚
華やかな舞踏会の情景を、鋭角的な構図で切り取った木版画がベース。ホールのカーテン越しに見える風景は、ステンドグラスのようなカラフルな刺繍で表現されています。1911年、ベルリン時代の初期作品である本作は、都市の喧騒と華やかさを鋭い視線で捉えており、キルヒナーの作風が変化していく過程を垣間見ることができます。
E. Backhausen 3世の蔵書票
私的な紙片に刻まれた芸術精神を纏う一枚
1907年にドレスデンで制作された蔵書票(Ex Libris)をモチーフに、キルヒナーが友人E.バックハウゼン3世のために彫った小作品をTシャツへと昇華。シルクスクリーンの繊細なプリントに加え、男女の顔のパーツを刺繍で立体的に表現しています。縦横わずか6cmほどの作品に込められた、個人的でありながら普遍的な芸術精神が、現代の装いとしてよみがえります。

RIVORAのTシャツは、ストラスブルゴが提案する"大人の日常"にこそふさわしい一着です。Tシャツはシンプルだからこそ、選ぶ人の個性や美意識が映し出されます。「色」「形」「デザイン」など様々な視点から選ばれる中で、もしこのシリーズがあなたの心に何かを響かせたなら、ぜひ手に取ってみてください。
そして、「着るアート」という新しい体験を、日常のワードローブに加えてみてはいかがでしょうか。
【RIVORA】
2009年にスタートした、日本発のブランド。ニットとカットソーを得意とし、大人に向けた上質なカジュアルウェアを展開しています。
「ART T-SHIRTS」シリーズでは、Tシャツをキャンバスに見立て、毎回異なるアーティストの作品を取り上げながら、アートとファッションの融合を試みています。
▶︎ RIVORAによる紹介記事はこちら
【BRUCKE(ブリュッケ)】
「ブリュッケ」は、複数の若き芸術家たちによって結成されたグループで、1905年にドイツ・ドレスデンで誕生しました。
その中心的存在が、当時25歳だったエルンスト・ルートヴィヒ・キルヒナーです。表現主義の先駆けとして知られ、後のヨーロッパ美術に大きな影響を与えました。