ファッションエディター・ファッションジャーナリスト 矢部克已
ELEMENT OF STYLE KITON
Style No.09
ファッションエディター・ファッションジャーナリスト 矢部克已

毎回、ゲストの方がストラスブルゴのセレクトアイテムからお気に入りを選定し、セルフスタイリングするこの企画。9回目は、イタリアファッションに精通し、ストラスブルゴとも親交のある矢部克已さんの着こなしをご紹介。熟練の合わせで攻略する〈キートン〉のコートスタイルをお届けします。


イタリアを知るファッションエディターが選んだ
スタイルとは?

僕のファッションエディターとしてのスタートは、『流行通信』のメンズ版として1988年に創刊された『流行通信HOMME』でした。まさに日本はバブル期で、DCブームやイタリアインポートブームなども起きていた時期ですね。大人の読者をターゲットとした『流行通信HOMME』は、イタリアものを中心とした紳士のファッションスタイルを特集していこうというのが命題でした。新入社員の僕自身は、まだ、そこまでイタリア好きって感じではありませんでしたが、誌面では、〈ジョルジオ・アルマーニ〉、〈ジャンニ・ヴェルサーチ〉、〈ジャン・フランコ・フェレ〉、〈ジャン・マルコ・ベントゥーレ〉など、一世風靡したイタリアブランドが登場していました。編集者としても多くのイタリアブランドに触れる機会が増え、なかでも実体験として〈アルマーニ〉や〈ヴェリー〉の魅力に気付きのめり込んでいったことが、僕がイタリアものに興味を持つようになったきっかけなんです。その後、『メンズクラブ』に移りトラッドスタイルを学んで、退社後イタリアに1年間の留学・遊学に行きました。フィレンツェ、ナポリ、ヴェネツィア、ミラノの4都市に住んでイタリアの文化に触れることができたのは、実にいい経験となっています。それぞれの土地に個性があり、ファッションは先進国だけど先進国らしくない独特の文化や生活が興味深かったんです。

コーディネイト

1997年に「ストラスブルゴ」が東京へ進出し、南青山店がオープンしてからは、来日するイタリアブランドのオーナーやサルトの取材などで幾度となく関わりを持たせていただいております。今日のスタイリングは、〈キートン〉のコートをベースに、クラシックなアイテムで全体をまとめてみました。コートは、やや濃いめの茶系を選んだのは正解だったと思います。他にもう少し明るい茶色の素材もありましたが、このぐらいがグレーのスーツとも相性がよく、上品に見える丁度いいバランスに仕上がります。スタイリングに合わせたのは"すべて5年以上前のもの"という自分なりの切り口で選んでみました。ダブルのスーツは、2014年にナポリの〈ヌンツォ ピロッツィ〉で仕立てた1着で、冬になるとよく着ています。シャツは、2017年にス・ミズーラした〈ボリエッロ〉で、タイは2004年頃に購入した〈マリネッラ ナポリ〉。気がつけば、全部ナポリですね(笑)。ちなみにシューズは、2003年にセミオーダーした〈エドワード グリーン〉。ハットは〈ボルサリーノ〉の2017年のオーダーものです。

コーディネイト 細部

僕は、クラシックなアイテムは当然、5年、10年前のものであっても十分着られると考えているし、実際に着続けています。新しい服であってもヴィンテージ感があるものが1つ2つ入ることによって、新しいスタイルができるんじゃないかなと思っているんです。そのスタイルの裏側には、過去に無駄な買い物をし続けた経験と反省が込められているんですけどね(笑)。

KITONとは?

7代に渡り、服地卸を営む家系に生まれたチロ・パオーネ氏が、脈々と受け継がれてきたナポリ仕立てによる新しい時代の最高のスーツ作りを掲げて1969年にナポリにて設立。創生期には、チェザーレ・アットリーニ、エンリコ・イザイア、ルチアーノ・バルベラが参集していた。

ファッションエディター・ファッションジャーナリスト 矢部克已
ファッションエディター・ファッションジャーナリスト

矢部克已

KATSUMI YABE

1964年東京生まれ。流行通信社(『流行通信HOMME』編集部)、婦人画報社(『メンズクラブ』編集部)を経て、イタリアに渡る。フィレンツェ、ナポリ、ヴェネツィア、ミラノの4都市に移り住む。帰国後、ウェブマガジン『DUCA』、『Espresso per te』(ソフトバンククリエイティブ)編集長歴任。星美学園短期大学で非常勤講師。雑誌『メンズプレシャス』のエグゼクティブ・ファッションエディターを務めた。ウェブサイト、トークショーでも活躍。イタリアのクラシックなファッションを中心に、メンズファッション全般にわたる歴史やスタイル、トレンドに精通し、SNSを積極的に発信する。
Twitter ID@katsumiyabe
Instagram ID : @katsumiyabe

ARCHIVE

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[09] ファッションエディター・ファッションジャーナリスト 矢部克已 × KITON

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[08] 新聞記者 小峰健二 × SARTORIO

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[07] 新聞記者 小峰健二 × SARTORIO

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[06] 靴磨き職人 長谷川裕也 × EDWARD GREEN

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[05] 靴磨き職人 長谷川裕也 × BARBA

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[04] イラストレーター 綿谷寛 × CRUCIANI

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[03] イラストレーター 綿谷寛 × CRUCIANI

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[02] フォトグラファー 長山一樹 × SARTORIO