ファッションエディター・ファッションジャーナリスト 矢部克已
ELEMENTS OF STYLE CRUCIANI
Style No.10
ファッションエディター・ファッションジャーナリスト 矢部克已

オシャレ感度の高いゲストを招いて、ストラスブルゴのお気に入りアイテムを使ったセルフコーディネートを披露する連載コンテンツも早10回目。前回に引き続き、イタリアファッションのご意見番である矢部克已さんが登場。〈クルチアーニ〉の上級カーディガンを美しく着こなします。


新しいものとクラシックをミックスする面白さ。

イタリアは、先進国のなかでも、まだまだそれぞれの土地に顔があって個性がある。アパレルの分野でいうと、ナポリの仕立ての世界とか、〈クルチアーニ〉の拠点でもあるウンブリア州のニット産業、さらには、トスカーナ州の皮革産業とか、日本でも知られているたくさん土地の顔がありますよね。僕は、そういう地域に根ざしたモノづくりの背景に豊かさを感じています。未だにそういうものに憧れるし、今でも33歳の時の充実した1年間のイタリア留学が自分の人生観に大きな影響を与えたと懐かしく振り返ることがあります。チャンスがあれば、もう一度イタリアに、特にローマに長く住んでみたいですね。

コーディネイト
コーディネイト

この〈クルチアーニ〉のニットを最初に見た時に、リラックス感を残しながらも、やっぱりきれいなクラシックスタイルをカジュアルに落とし込んだ着こなしにしたいと思いました。カシミヤ素材の上質感と様々な色の糸で構成されたメランジの風合いが絶妙ですね。ニットアイテムとして洗練されているにもかかわらず、フードが付いてスポーティなデザインであることも面白みがあります。まさに、クラシックスタイルを"カジュアル顔"にした1着。そして驚くのは軽さと暖かさ。なにかと重衣料でかさばる季節ですから、これはすごく着やすくて重宝します。ボトムは、〈パンタロナイオ オサクハヤト〉のス・ミズーラで仕立てたウールパンツを合わせました。コットンパンツでもいいんだけど、僕の好みはウールとのスタイリングですね。で、もうひとつの着こなしポイントが、青色と茶色の組み合わせ。イタリア語でも「アズーロ・エ・マローネ」と言って基本的な色合わせとされていて、僕もこれが好みなんです。インナーは、2006年に一目惚れし、色を選んでパターンオーダーした〈クルチアーニ〉のスーパー210のウールの極薄ニット。何十回も着ていますが、まったく生地にダメージがない。相当に生地がいいのでしょうね。首に巻いたスカーフは、70年代ぐらいのヴィンテージです。シューズは、〈クロケット&ジョーンズ〉で、これも10年近く愛用していますね。2年前にオールソール交換をしました。実は、仕事用のボールペンもイタリアブランドで、〈ヴィスコンティ〉。ピッティウォモなどでフィレンツェを訪れた時にお店にぶらっと入って見つけたもので、少しずつ集めています。「ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ」シリーズと呼ばれていて、ゴッホのひまわりや星月夜などの名画をモチーフにしたものなんです。僕の着る物や持ち物はイタリアのもので溢れているんですよね。

コーディネイト 細部

前回のインタビューでもお話ししましたが、クラシックなデザインのものは、時代を超越し、廃れないと思うんです。現に、新作の〈クルチアーニ〉のボタン開きニットに、5年、10年以上も着ているパンツやインナーを合わせても何の違和感もない。そして僕の持論ですが、やっぱりファッションは、身につける物で自分の内面を表現してしまうものです。だからこそ、いろんな服やスタイルを試して多くの無駄が経験値となり、結果的に自分のスタイルが見えてくるのだと思います。さらに言えば、3年に渡るコロナ禍がファッションへの思考を変えましたよね。トレンドを求める必要性についてすごく考えさせられました。奥深いクラシックスタイルの魅力を探りながら、この先もずっとイタリアのファッションを楽しんで行きたいと思います。

CRUCIANIとは?

1966年にイタリア・ペルージャにてニットファクトリーとして創業。1993年より、ブランドとしてコレクションをスタート。現在では、世界最高峰のニット糸製造工場、Caliaggi社の糸を主に使いニットコレクションを展開している。定番モデルのシルエットは、タイト&フィットが基本で、着心地の良いシルクカシミヤニットがブランドのアイコンになっている。クラシック過ぎない、モダンな感覚を持ったハイクオリティなブランドとして人気。

ファッションエディター・ファッションジャーナリスト 矢部克已
ファッションエディター・ファッションジャーナリスト

矢部克已

KATSUMI YABE

1964年東京生まれ。流行通信社(『流行通信HOMME』編集部)、婦人画報社(『メンズクラブ』編集部)を経て、イタリアに渡る。フィレンツェ、ナポリ、ヴェネツィア、ミラノの4都市に移り住む。帰国後、ウェブマガジン『DUCA』、『Espresso per te』(ソフトバンククリエイティブ)編集長歴任。星美学園短期大学で非常勤講師。雑誌『メンズプレシャス』のエグゼクティブ・ファッションエディターを務めた。ウェブサイト、トークショーでも活躍。イタリアのクラシックなファッションを中心に、メンズファッション全般にわたる歴史やスタイル、トレンドに精通し、SNSを積極的に発信する。
Twitter ID@katsumiyabe
Instagram ID : @katsumiyabe

ARCHIVE

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[09] ファッションエディター・ファッションジャーナリスト 矢部克已 × KITON

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[08] 新聞記者 小峰健二 × SARTORIO

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[07] 新聞記者 小峰健二 × SARTORIO

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[06] 靴磨き職人 長谷川裕也 × EDWARD GREEN

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[05] 靴磨き職人 長谷川裕也 × BARBA

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[04] イラストレーター 綿谷寛 × CRUCIANI

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[03] イラストレーター 綿谷寛 × CRUCIANI