カラッとドライな中南米風アースカラーで
リゾートスタイルを華麗に刷新
夏のリゾートをスタイリッシュに愉しむ装いとは、そしてリゾートとシティを自由に往来できる着こなしとは? この季節になると、誰もが頭を悩ませる由々しき問題です。たとえリゾート、カジュアルであろうとも、だらしのない弛緩したスタイリングは論外。しっかりリラックスしてオフを満喫しながらも、気品と節度を保った紳士の装いであることが大前提です。"いま"っぽさ、トレンド感を加味できれば理想的。そこで今回おすすめしたいのが、タイやチーフ、スカーフなどの巻き物で首周りを華やかに引き締めつつ、テラコッタ、ターコイズ、サフランといった、中南米を思わせる湿度を感じさせないカラーを大胆に取り入れること。フェード感のある、草花や鉱石を想起させるカラーパレットで、ジメジメした空気を颯爽と吹き飛ばす───そんな鮮度抜群のスタイリングをご堪能ください。


Style 1
際立つ個性が見事に調和
大人だから、リゾートだからこそあえて身に着けたいのがテーラード。しかし季節感、特別感、トレンド感を表現するうえで、これ以上の1着はないかもしれません。テーラード型でありながら、素材はコットンニット。幾何学模様の透かし編みが目を引くこのジャケットは、まるでリゾート地に建つ邸宅の土壁、あるいは素焼きの陶器のような、エレガントで旅情を掻き立てる色味もまた印象的です。奥行きのある立体的な編み柄が絶妙なニュアンスを醸し、軽やかな抜け感と唯一無二の存在感を演出してくれます。
インナーには<テラ ジェノバ>による、上質なリネンを駆使したテラコッタ色のシャツジャケットを合わせています。ドライでライトなタッチと上品なシワ感が魅力的で、アウターとしても活躍してくれること必至の着回し力に優れる逸品です。そのすっきりとしたコンパクトな襟には、まるでジェダイト(翡翠)のような明るいグリーンが際立つ<セブンフォールド>のボタニカル柄シルクタイを。
ボトムスにも<ピーティー トリノ>のカモフラージュ風ボタニカルプリントのスイムショーツ、そして足元に極上のムードと機能性、伝統的クラフツマンシップと洗練のデザインが融合した<サントーニ>ならではのレザーサンダルを合わせれば、大自然にフィットするナチュラル感と都会的で心地よい緊張感の同居する、端正なリゾートスタイルが完成します。


Style 2
クラシカルなカジュアルアップ
いまの気分を表現してくれる、旬の色味がフェード系のアースカラー、素材がリネンだとするなら、アイテムとして押さえておきたいのがシャツジャケットです。
注目ブランド<ユーゲン>の定番モデルであるシャツ「ROB」は、1940年代のミリタリーシャツをベースにエレガントで凛とした佇まいに仕上げた、バンドカラーのロングシャツ。いわゆる"シャツジャケット"ではありませんが、裾出しで着ても、ジャケットのようにバサッと羽織っても絵になる、汎用性の高い名作シャツです。パターンの追求から生まれた独自の2枚袖、汚れやすい襟だけを取り外して洗濯できるようにした旧き良きデタッチャブルカラー用ボタンホールをデザインアクセントとする1枚は、ヴィンテージ感のあるジェダイトカラーもポイント。色味が近しい<スヴェーヴォ>のスキッパーポロと合わせれば、ワンランク上のセンスを感じるアンサンブルのできあがりです。
<スヴェーヴォ>は、イタリア・パルマの伝統的職人技術をいまに伝える、<クルチアーニ>と双璧をなすニットブランドの最高峰。良質なエジプト綿のなかでも特に優れた肌触りで知られる「マココットン」をゆっくりソフトに編み上げたニット生地は、シルクのような艷やかさとしなやかさ、そしてラグジュアリーな風合いが光ります。
ジオメトリックな編み柄と襟のみ単色とした配色の妙を強調するのは、さりげなく内に重ねた<ストラスブルゴ>のシルクコットンポロシャツ。首には<フライ>のアーカイブファブリックを駆使したポケットチーフをひと巻きし、ショーツは<ピーティー トリノ>による、バミューダタイプのイージーショーツ。落ち着いたブラウンカラーに加えてシャープなカッティングに凛々しいクリース入りだから、ちょっとドレスでメリハリの効いた、粋なリゾートスタイルに仕上がるのです。


Style 3
モダンに"リゾート"を満喫する
思わず見惚れるポップなカラーリングのカプリシャツは、1982年の創業以来シャツ専業を貫いてきたカミチェリア<チリエッロ>による、遊び心あふれる1枚。カジュアルな見た目でありながらエレガンスを感じさせるのは、ハンドとマシンをミックスした卓抜のステッチワークのなせる業。肌離れのいいドライなリネン素材を駆使し、前立てはループボタン留めのハーフプラケットデザイン。袖口は、柔らかく優しい印象のラウンドカフスを採用している。
このイエローとブルーという洒脱な色使いとリンクするインナーのTシャツは、意外性たっぷりな<クルチアーニ>によるもの。ソフトでドライなタッチが気持ちいいコットンパイルを使用しており、快適な着心地はもちろんのこと、起毛したパイル地ならではの独特な発色も魅力的です。左胸に小ぶりのポケットを配した"ポケT"仕様で、すっきりしつつもほどよいゆとりのある絶妙なシルエットのため、いつでもどこでも、さまざまな着こなしが愉しめるはずです。
そんなポップさと軽快さが際立つアイテム選びだからこそ、ここでも"首にひと巻き"が威力を発揮。<ペトロニウス>のリネン製アスコットタイを優雅にまとえば、チェック&チェックの洗練、青みのあるトーンでまとめたカラーリングの妙が引き立ちます。合わせるショーツは、なんとスエード素材。心地よい重量感と現代的なワイドシルエット、上品なブラウンカラー、そして錚々たるメゾンブランドのOEMも手掛ける英国ブランド<エーエム>ならではの圧倒的クオリティが、このスタイリッシュな佇まいを決定付ける要因となっているのです。
足元にはレザーとジュートソールのコンビネーションが美しい、<ヘリュー>のエスパドリーユを。伝統的なそれとは一線を画す、洗練されたモダンなフォルムが都会的で、甲部分のエラスティック使いにより足入れはしやすく、フィット感も抜群。まさに言う事なし、リゾート感の演出にもってこいの傑作シューズです。
Photographs by Mai Kise
Styling by Taichi Sumura
Edit & Text by america