FOCUS ON 2025 SS Vol.2  SARTORIO

たっぷり語りたい、あのブランド・この名品

<サルトリオ>とはなにか───
その本質を体現する「CS」ラインの成熟度

1969年の創設以来、"ナポリ仕立て"の象徴として頂点に君臨する<キートン>。そのグループの中核をなし、ヴィンテージから着想を得てアップデートさせたファブリックを駆使しながらモダンで都会的、そしてラグジュアリーなコレクションを展開するブランド、それが<サルトリオ>です。時代性を巧みに吸収し新モデルとして提案するセンスも特筆に値する<サルトリオ>ではありますが、やはり贅沢なフルキャンバス(総毛芯)仕立てでタイムレスかつ普遍的なスタイルを描き出す「CS」ラインこそ、その本質であり神髄。そんな「CS」ラインの魅力を、改めて検証していきましょう。

<キートン>グループの本領発揮、
面目躍如の「CS」ライン

かつてヨーロッパ随一の栄華を誇り、富と文化の中心として栄えた都市国家・ナポリ。英国伝統のシャープで構築的な"テーラリング"とは一線を画す、しなやかで流麗なナポリ仕立ての"サルトリア"は、世界中の王侯貴族やセレブリティに支持され、いまなおクラシックなメンズウェアの王道であり続けています。そんな幾星霜を経て脈々と受け継がれてきたナポリ仕立てによる、最高のスーツづくりを掲げ1969年に創設されたのが、かの<キートン>。そして同グループのリソースである伝統的職人技術と現代のテクノロジーを融合させ誕生した<サルトリオ>こそ、ナポリ仕立ての最先端にして合理性の最高峰といっても過言ではありません。

ハーフキャンバス(半毛芯)仕立てでハリ感がありながらもソフトな着心地の「LM」、今日的なゆとりのある「IZ」や「IZG」など時代性を反映した秀逸なモデルも魅力的ですが、なんといっても<サルトリオ>の神髄であり本質を体現するのは、不朽の大定番となっているフルキャンバス仕立ての「CS」ラインです。これみよがしな仕様やディテールで"ナポリ仕立て"を謳うでもなく、ソリッドで静謐、シャープなカッティングでありながらさりげなくロマンティック───これぞ現代最高の都会的"ナポリ仕立て"と思わせる、いまこそ手に入れておきたい<サルトリオ>「CS」ラインの傑作スーツをご紹介します。


「CS」ラインのスーツは、堂々とした構築的なシルエットでありながら袖を通せば実にソフトでしなやか。そこはかとなくクラシカルなムードを湛えつつも、しっかりモダンで都会的です。適度な丸みを帯びたジャケットのショルダーラインやフロントカットにナポリらしい職人技術を感じさせると同時に、ビジネスシーンにフィットする緊張感とクールさをも兼ね備えている───まるで英国的なテーラリングとナポリ的なサルトリアのいいとこ取りをしたかのような、唯一無二の佇まいこそ真骨頂といえるでしょう。

上品な光沢を放つ最高級のウール生地で仕立てられたこのネイビースーツも、もちろんすべての芯地に毛芯を使用したフルキャンバス仕立て。柄が主張しないソリッドな生地だからこそ、ナポリ仕立てにありがちなクラシック感や華美さがグッと抑えられ、ビジネスはもちろんあらゆるオケージョンに対応できる無敵の汎用性を手に入れています。ジャケットのウエストは程ほどよくシェイプされ、スポーティで機能的なサイドベンツを採用。決してスタイルばかりでなく、現代都市生活者にとっての実用性や着用感にも配慮が行き届いているのが分かります。


このスーツは、同じく無地で万能なミディアムグレーも展開。「CS」ラインは非常に高度なマシンメイドをベースとしつつ、着心地や表情に顕著な違いが生まれる重要な部分のみハンドメイドで仕上げています。だからシャープな印象なのに立体的で、ラペルロールの美しさも格別。クールでモダンに見えても、しっかりサルトの技術と着心地が味わえる。トップ画像を見ていただければ明らかなように、スマートなレッグラインを描くトラウザーとのバランスも絶妙です。

<サルトリオ>のスーツに対し、クラシカルなナポリ仕立ての良さがモダンなエッセンスやマシンメイドによって際立たなくなってしまったと、ネガティブに捉えている方もいるかもしれません。しかしそれは、大きな間違いです。

なぜなら彼らのマシンワークは極めて高度で合理的かつ洗練されたものであり、細かさや正確性においては職人の手仕事を凌駕するもの。要所にハンドメイドを取り入れることで、無駄のない直線的ラインと豊かな立体感を両立し調和させているのは見事というよりほかにありません。またナポリ仕立て特有の華やかさや優雅さといった魅力は、ときにフォーマルや堅めのビジネスシーンにそぐわないことも。その点、クラシックをモダンな解釈で表現した<サルトリオ>「CS」ラインのスーツなら、あらゆるTPOで"ナポリ仕立て"を満喫することができるのです。

本当の"ナポリ仕立て"愛好家こそ、日常でも非日常でも活用できる「CS」ラインのスーツを手に入れるべき───そう思わせる説得力が、間違いなくこのスーツにはあるといえるでしょう。

Photographs by Mai Kise
Styling by Taichi Sumura
Edit & Text by america

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