Style No.01 フォトグラファー 長山一樹
数多くのメディアで活躍し、ストラスブルゴのカタログ撮影もご担当いただいている長山一樹さん。業界では数少ないスーツスタイルで撮影をこなすことでも知られる、ジェントルマン・フォトグラファーだ。ここでは、ゲストの方がストラスブルゴのセレクトアイテムからお気に入りをピックアップし、それを使ったセルフスタイリングを披露。こだわりのコーディネイトを紹介していきます。
スーツ好きにも刺さる、 マルチなサファリジャケット
普段はスーツスタイルが多いのですが、夏の暑い時期のスタイリングにいつも悩みます。タイドアップも暑苦しいし、スーツの代わりになるものってなんだろうって考えたときに、クラシックな開襟シャツを取り入れるようになりました。素材は夏らしく天然繊維のリネンを選びます。その上に、テーラードジャケットを着るとビジネス色が強くなるので、着崩すという意味でも〈サルトリオ〉のサファリジャケットはぴったりです。パッチポケットのあるジャケットは、良い意味でカジュアルダウンされてビジネス要素が半減されますから。それに濃紺とか黒の色目だと少し艶っぽい印象ですが、このサンドベージュは、モロッコやキューバなどを連想させる絶妙なリゾート感がいいですね。
特に気に入ったのは、綺麗なドレープが出る上質なリネン生地を使っているところ。メイド・イン・イタリーという時点でファブリックと仕立ての良さは、折り紙付きです。厚地で美しいカーブが表現されるマテリアルは、ラフになり過ぎず、清潔感があるのでとても好感を持てますね。シャツに比べてウェイトのあるリネン素材なので重力でストンと落ちるため、柔らかくゆるいドレープが生まれるんです。しかも、〈サルトリオ〉の中でもこのジャケットは、窮屈な感じがなくて、ゆったり着られるのがとても魅力的。基本イタリア物は細身なので、個人的には敬遠しがちなのですが、これは自分好みのサイズ感です。どことなくイタリアっぽく見えないのは、このジャケットの持つサイジングのパターンにあると思います。写真を撮る仕事なので、タイトだと動きも不自由になりますからね。それとポケットの位置や大きさが素晴らしい。特に胸ポケットの形。四角くてもダメだし、これは上の方が若干狭まっていて少し袋状になっているのがポイント。この丸みが、堅さやいやらしい印象を和らげてくれます。細かい話ですが、ボタンの配色も上品ですよね。
自分のスタイリングにおいてパンツが果たす役割は非常に大きいです。仕事柄というのもありますが、パンツは、動きやすい太いタック入りのパンツを穿いています。股上が深いのがいつものスタイルです。ピッティなどのファッションスナップでは、細身のピタッとしたパンツにクラッチバッグを持つような着こなしをよく見かけますよね。そうではなく、逆にすごく力の抜けたシルエットに見せたかったので、かなり太いチノパンをサファリジャケットに合わせてみました。例えばこれが細くてちょっとドレッシーなリネン素材で上下を合わせてしまうと、個人的に少しいやらしさが出てしまう気がして。なので、トラッドなチノパンで合わせることで、イタリアもの特有の艶っぽさをカジュアルダウンさせているんです。このパンツは、とても使い勝手がよく、紺ブレにもハマります。ただ、野暮ったく見せないためにも、チノパンもタック入りがマストです。
元々好きな色ですが、春夏になるとベージュや茶系のアイテムを使うことが多いです。特にオフホワイトやサンドベージュは、自分の中のキーカラーでもあり、選んだサファリジャケットを軸にワントーンで仕上げてみました。ベージュ系のワントーンは、少しボヤッとするので、足元は濃いめをチョイスすると全体が引き締まります。少し乾いた印象を統一するために表革ではなく、ヌバックのタッセルシューズを合わせました。同様に、イギリス仕様のハットも黒リボンを選び、上下の小物使いで締めるようにしています。
さらにこだわったのは、リネンのレイヤリングです。少し厚地で硬いリネン素材を用いた〈サルトリオ〉のジャケットに対して、インナーの開襟シャツは、柔らかいフワフワした素材感で変化を付けています。リネン×リネンのレイヤードは、見た目も涼し気でいいですよね。
僕は普段スーツで撮影するんですけれど、ロケーションによっては浮きまくるんですよ(笑)。例えば九十九里に行くとサーファーにチラ見されますし、山とかに行ってもみんな登山しているのに、スーツの人間がカメラ持ってガツガツ山に入っていく違和感? カメラマンはロケも多いので、こういうサファリジャケットはとても重宝します。どんなシチュエーションでも馴染むし、とは言え決してアウトドアファッションではない。ちゃんとオーセンティックな、スーツが好きな人の延長線上にあって、スタイルを崩さずに自分らしさを表現できるアイテムだと思います。
SARTORIOとは?
クラシックでありながら時代に合わせたモダンなスタイルを提唱するブランドSARTORIO(サルトリオ)。軽快なナポリ仕立てを軸に新鮮なスーツスタイルを打ち出している。ナポリで最大級の工場を持つKITON(キートン)グループの傘下であり、その中核を担うサルトリオは、卓越した技術力で表現されるスマートなシルエットやヴィンテージを現代的に解釈したファブリックも大きな魅力と言える。
フォトグラファー
長山一樹
KAZUKI NAGAYAMA
1982年生まれ。神奈川県出身。スタジオマンを経て2004年に守本勝英氏に師事。2007年より独立。ファッション誌のほか、アパレル広告など多数のクライアントワークを手掛ける。現在は、映像にも力を入れており、人気YouTubeチャンネル『THE
FIRST TAKE』の映像監督を務めるなど、多方面で活躍中。