ELEMENTS OF STYLE 03
「イラストレーター 綿谷寛 × CRUCIANI」

ELEMENT OF STYLE CRUCIANI
Style No.03
イラストレーター 綿谷寛

毎回、ゲストの方がストラスブルゴのセレクトアイテムからお気に入りを選定し、セルフスタイリング。その着こなしについて語っていただくのがこのコンテンツ。3回目は、イラストレーターとして長きに渡りメンズファッションを描き続けてきた綿谷寛さん。50年代のアメリカンイラストレーションのスタイルを継承した彼のイラストは、現在でも唯一無二の存在だ。一方で、自身のお洒落なトラッドスタイルは、ファッション業界でも多くのファンを持つ。そんな綿谷さんに、イタリア最高峰のニットブランドとして名高い〈クルチアーニ〉のアイテムを自身の私物と交えてセルフスタイリングしていただきました。


イタリアものを
プレッピーに着こなす

僕は、昔からトラッドがスタイルのベースなんだけど、実は僕が着ているものは、全部がアメトラや英国ミックスじゃないんですよ。もしかしたら、皆さんには、あまりイメージがないのかもしれませんが、一時期、イタリアもののパンツをよく穿いていたこともあったんです。そうすることで、いつものイギリスのレトロな感じが少し薄まってモダンに仕上がるかなと思ってね。やっぱりお洒落には、時代ごとの空気感とか今っぽさっていうのが必要ですからね。だから、僕もネクタイだったりパンツだったり、スタイリングの中に今の気分を取り入れるようにしています。若いうちは、英国風とかアメトラ風とかで着ていてもいいんだけど、年をとってからも同じことをしているとやっぱり懐メロになっちゃうんですよね。イラストを描く時でも、服のサイズ感とかパンツの太さとか時代によって微妙に違いがあるので、意識して描いています。

綿谷寛さんのコーディネイト

〈クルチアーニ〉は初めて着ましたが、アイテムによっては、僕のスタイルにもハマりがいいと思いますね。定番のニットなら、トラッドなジャケットとの相性が良さそうだし。僕が選んだネイビーのジャケットは、最初に見た時からポロシャツに合わせようと決めていました。一般的には、〈クルチアーニ〉はイタリアのブランドだから、ポロシャツと合わせるイメージがないかもしれませんが、僕の場合は、やっぱりこの感じのジャケットが好きですね。そういう意味では、僕みたいなトラッドおじさんでも着こなせるし、新鮮に見えると思いますよ。素材がジャージなので着心地もすごくいいですね。通気性も良さそうだからちょっと汗をかいてもベタベタくっつかなそうだし。今日は自分が街で着るイメージでコーディネイトしているけれど、それこそ、リゾートみたいな場所でT シャツの上に羽織るぐらいの感じが気持ちいいんだろうね。足元はサンダルでね。だけど、僕の華奢な体型だとちょっと似合わないかもしれないな(笑)

綿谷寛さんのコーディネイト

今回選んだネイビーのジャケットは、ちょっと丈が短いし、プレッピーっぽく着ようと思ったんです。このピンクのパンツは、英国ブランドのものだけど明るめの色味を選んでみました。さすがにボタンダウンシャツはやりすぎかなと思って、ポロシャツにピンを挿してタイをしてみました。ポロシャツにピンを挿すのは、80年代にあった着こなしなんですよ。最初にお話ししたように、時代によって色だったり柄だったり今の空気に合うものを選んでコーディネイトするのは、とても重要だと思うんですよね。僕の職業的にも絵を描く仕事をしていますから、いつも、街にいる人たちがどんなものを着ているのかをチェックしています。ファッションイラストっていうのは、"今"を描くのが仕事ですからね。テーマがレトロとかならいいんだけど、今のトレンドを表現しないといけないですからね。ちょっと話が逸れちゃいますが、ファッションイラストを描くときに、パンツの丈や太さ、靴の大きさっていうのは微妙なことだけど表現に差が出るんですよね。だから、自分自身のコーディネイトにも同様の気遣いをしているんです。

綿谷寛さんのイラスト

自分なりのスタイルがあれば、流行り物を無闇に追う必要はないんです。自分のスタイルは昔から大きくかわらないんだけど、今の空気感だけ少しとりいれるっていうのが大事ですよね。それと、若いうちは、ダメージ物やヴィンテージもいいけれど、年齢を重ねると何よりも清潔感が大切です。それでなくても自分自身がエイジングされているんだからね。

CRUCIANIとは?

1966年にイタリア・ペルージャにてニットファクトリーとして創業。1993年より、ブランドとしてコレクションをスタート。現在では、世界最高峰のニット糸製造工場、Caliaggi社の糸を主に使いニットコレクションを展開している。定番モデルのシルエットは、タイト&フィットが基本で、着心地の良いシルクカシミアニットがブランドのアイコンになっている。クラシック過ぎない、モダンな感覚を持ったハイクオリティなブランドとして人気。

イラストレーター 綿谷寛
イラストレーター

綿谷寛

HIROSHI WATATANI

1957年生まれ。東京都出身。1979年、雑誌『ポパイ』にてイラストレーターとして活動を始める。アメリカの50年代のイラスト黄金期を彷彿させる正統派のファッションイラストと、風刺的でコミカルなタッチを使い分け、雑誌や書籍、広告媒体で活動中。2018年には、初の作品集となる『STYLE:男のファッションはボクが描いてきた』(小学館)を発刊。