靴磨き職人 長谷川裕也
毎回、ゲストの方がストラスブルゴのセレクトアイテムからお気に入りを選定し、セルフスタイリング。その着こなしについて語っていただくのがこのコンテンツ。5回目は、靴磨き職人として店舗Brift H / ブリフトアッシュを展開する長谷川裕也さん。職業柄、何百足もの靴に触れ、多くの紳士たちを見てきた彼が今回選んだのは、〈バルバ〉のジャケット。自身も服好きと自負する長谷川さんの私物とセルフスタイリングしていただきました。
異なるテイストを
ミックスさせる面白さ
僕は、いわゆる服好きなんですけど、自分ではけっしてお洒落だとは思っていないんです。でも、いろんな服を着て試すのが好きなんです。だから、コーディネイトの振り幅も人よりは広めかもしれません。今回選んだ〈バルバ〉のジャケットは、イタリアブランドですが、あえてそれっぽく着ないというか、ちょっと普通には合わせなそうなスタイルにしてみました。ポイントは、アメリカ顔のチノパンとVチップのコードヴァンですね。ジャケットがすごく上品なので真逆な印象になるように無骨なチノパンを選んでみました。下半身はアメリカンな印象になっていると思います。元々明るい色も好きなのでこのイエローのシャツもすごく気に入っています。靴磨きのスタイルも店作りもそうなんですが、ブリティッシュとかクラシックとか正統派で一辺倒なイメージにはしたくないんです。例えば、パンク的な要素だったりストリートだったり、違うテイストをミックスさせないとなんかしっくりこないんですよね。ミスマッチを狙うというか楽しむイメージですね。
上手く言えないんですが、「そのまんま」的な見え方が好きじゃないんですよね。ちょっと自分らしく裏切りたいというか。店のお客さまは、比較的スーツ姿でいわゆる正統派な着こなしの人が多いんですが、僕がカッコいいと思う人は、どこのブランドの服か分からないけどカッコ良く見える人なんです。それは、コーディネイトだったり、着こなし方だったりしますが、パッと見てどこの服か分かるのってあんまりお洒落な感じがしないんですよね。だから、僕自身もすぐには分からないような服を選んで買いますね。
この〈バルバ〉のジャケットは、今日着てみて分かりましたが、とにかく軽い。さすがシャツブランドが作ったジャケットだなと思いました。僕らみたいな体を動かす仕事にはまさにピッタリですね。本当にジャケットを着ている感じではなくて、シャツを着ている感覚です。肩も凝らなくていい感じ。これらからの季節は靴を磨いていると暑くなるんですが、この生地なら涼しくて快適そうですね。あと、細かい話ですが、袖ボタンが無いデザインも気に入っています。普段靴を磨くときは、靴を傷つけないようにアクセサリー類を全部外しているんです。袖のボタンにも気を使ってしまうので、それが付いて無いのは実は僕にとって都合がいいんですよね。
BARBAとは?
1964年にイタリア・ナポリでアントニオ・バルバとヴィットリオ・バルバ兄弟により創業。小規模のアパレル工場からスタートし、90年代からはシャツブランドへと成長。イタリア屈指のシャツとして高い評価を得ている。現在では、シャツ以外にもスーツやジャケットなども手がけ、ハンドワークのテクニックを活かしたアイテムなども展開している。
長谷川裕也
1984年千葉県生まれ。20歳の時に、東京駅・丸の内の路上で独学の靴磨きを始める。日本初の靴磨き専門サイト「靴磨き.com」を立ち上げ、2008年には、南青山に靴磨き専門店Brift Hをオープン。「世界の足元に革命を!」をモットーに、業界を牽引。著書に、「続、靴磨きの本」(亜紀書房)、「自分が変わる靴磨きの習慣」ポプラ社など。