FOCUS ON Vol.8 SO

たっぷり語りたい、あのブランド・この名品

日本随一のビスポーク職人が手がける
美脚パンツの新たな"王道"

スリム、ワイド、ストレート、テーパードetc.
装いの多様化が進む目下、美脚パンツの形は
ひとつではなくなっています。
そんな中、ストラスブルゴ発のパンツブランド
「SO」が提案するのは、最上級の"王道"。
日本屈指のビスポークパンツテーラーとタッグを組み、
中庸の美をつきつめた一本を完成させました。
ドレスパンツの決定版と胸を張れる、渾身の出来です。

ビスポークのエッセンスを限界まで表現

2022年秋冬シーズンにデビューした「SO」(エスオー)は、トラウザーズテーラーの第一人者として知られる尾作隼人さんとストラスブルゴのコラボレーションによるパンツ専業ブランド。尾作さんが監修行い、日本有数の実力派ファクトリーが生産を手がけることで、ビスポークのエッセンスを既製品に落とし込んでいるのが最大の特徴です。

ビスポークパンツを中核とする尾作さんの名が世に知られ始めたのは、15年近く前のこと。そのクオリティは、ファッションメディア関係者やコアな仕立て服ファンに大きな衝撃を与えました。イタリアの美脚パンツが群雄割拠していた中でも、別格といえるほどに美しいシルエット。仕立てた人が口を揃えて「まるで別人のように脚がスラリと見える」と絶賛していました。

加えて、パンツ自体がオーラをまとっているかのように、不思議な存在感を放っているのも印象的でした。といっても、尾作さんのパンツに派手なデザインやこれ見よがしな手仕事の主張は皆無です。一切の誇張的表現を排除し、とことん中庸を追求した仕立て。その削ぎ落とされた作り込みが、至極ベーシックな佇まいのなかに研ぎ澄まされた刃のような美しさを宿していたのです。イタリアをはじめ海外にも腕利きのビスポークパンツテーラーは数多く存在しますが、この作風は唯一無二といえるでしょう。

日本屈指の名門テーラーに在籍したのち、当時の日本ではほとんど知られていなかったパンタロナイオ(パンツ専門のビスポーク職人)として身を立てることを決意。先行者のいない道は手探りなことばかりだったと話しますが、ひたむきな努力を続けて確固たるスタイルを確立。今では世界中からビスポークの注文が殺到し、完成までには1年以上の時間を要します。そんな尾作さんのビスポーク・クオリティを広くお客様へ届けるべく、既製パンツでその魅力を限界まで再現する。このような命題に掲げてスタートさせたのが「SO」なのです。

"究極の中庸"を支える、細部のこだわり

SOでまずこだわったのは、尾作さんの美意識である"究極の中庸"の表現。そのために、型紙はビスポークのスタイルをベースにして尾作さん自らが製作しました。シルエットは、ごくわずかに裾がすぼまる微テーパード。全体的にほどよいゆとりを持たせていることもあり、クラシックでありながら野暮ったくならない絶妙なバランスを狙っています。幅広い体型にマッチし、控えめでありながら際立つエレガンスを演出。至極控えめながら、尾作さんならではの手腕が遺憾なく発揮されています。

SOならではのアレンジとして、股上の前側だけを少しだけ下げているのも特徴。これにより、腰周りを包み込むようなはき心地をキープしつつ、適度なモダンさも宿した顔つきに仕上がっています。

さらに尾作さんの真骨頂といえる、研ぎ澄まされた作り込みもしっかり表現。プリーツを留めるカンヌキステッチなど細かい部分にもこだわり、内側のマーベルトなど見えない箇所まで本格仕立てを採用しました。尾作さんのパンツはプリーツ入りでも腰周りが膨らまず、フロントがフラットな"面"のように見えるのが特徴ですが、その佇まいも再現しています。

まるでヴィンテージ!?な、知られざる極上生地

また、生地にも尾作さんの知見を活かしました。こちらのパンツで採用しているのは、日本が誇る毛織物の名産地・尾州に構える「葛利毛織」が手がけたウール地。ションヘル織機という昔ながらの機械を用い、ゆっくりと時間をかけて織られているのが特徴です。

「高級生地=インポートというイメージがあるかもしれませんが、ことクオリティに関していえば、日本の生地は世界トップクラスのメーカーと比べても何ら劣るところはありません。唯一、色柄の表現力だけはやはりヨーロッパにアドバンテージがあるのですが、パンツの視点から見ると、それほど凝った色柄は必要ありませんよね。ですので、日本の生地には非常に注目しているんです。中でも、葛利毛織さんの生地は絶品。まるで上質なヴィンテージを思わせる雰囲気で、空気を含むような膨らみ感があるのに仕立て映えするハリコシも備えているんです」と尾作さんは話します。

クラシックなシルエット、ベーシックな無地でありながら、あらゆる面でクオリティを追求した渾身の一本。わかりやすい個性で勝負するのではなく、あえて難しい"王道"を追求しているのは、それだけ完成度に自信があるからなのです。